非常用ディーゼル発電機とは？その役割と工事まで解説！

2025年12月19日

工場の安定稼働と安全を守る上で、欠かすことのできない設備の一つが「非常用ディーゼル発電機」です。

地震や台風などの自然災害による停電時、工場の重要なラインを保護し、火災時には消火活動の命綱となるこの設備ですが、その仕組みや法的に定められたメンテナンス内容、更新工事のポイントを正確に把握できている方は意外と少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、非常用ディーゼル発電機の基礎知識から、選定・工事の際の注意点まで、現場で役立つ情報を徹底的に解説します。

非常用ディーゼル発電機とは？その役割と重要性

非常用ディーゼル発電機は、商用電源（電力会社からの供給）が遮断された際に、自力でエンジンを始動し、電気を供給するための設備です。

近年、大型台風や地震による大規模停電のリスクが高まっています。工場において電源が喪失すると、生産ラインの停止による経済的損失だけでなく、仕掛品の廃棄、さらには精密機器の故障を招く恐れがあります。非常用ディーゼル発電機は、BCP（事業継続計画）を策定する上で、最も重要な設備の一つと言えます。

また、単なる生産継続のためだけでなく、法律（消防法や建築基準法）によって設置が義務付けられているケースも多くあります。

これらは「防災用」と呼ばれ、万が一の火災時に確実に動作しなければなりません。

ディーゼル発電機は、その名の通り「ディーゼルエンジン」を動力源として「発電機（オルタネーター）」を回すことで電気を作ります。

非常用電源には「ガスタービン方式」もありますが、工場ではディーゼル方式が多く採用されます。

非常用ディーゼル発電機の導入や管理には、複数の法律が絡み合っています。これらを遵守しない場合、罰則の対象となるだけでなく、火災保険の適用外になるなどのリスクがあります。

関連法規	主な規制内容
消防法	消火設備（スプリンクラー等）のための電源確保。定期的な点検報告義務。
建築基準法	非常用照明やエレベーター等の予備電源。
電気事業法	「一般用電気工作物」または「自家用電気工作物」としての維持管理、保安規定の遵守。
大気汚染防止法	一定規模以上のエンジンは、排出ガス等の規制対象となる場合がある。

「設置してあるから安心」というわけではありません。非常用ディーゼル発電機は、**「いざという時に動かない」**ことが最大のリスクです。実際に、東日本大震災の際には、メンテナンス不良により約3割の非常用発電機が正常に動作しなかったというデータもあります。

消防法では、6ヶ月に1回の「機器点検」と、1年に1回の「総合点検」が義務付けられています。

2018年の消防庁告示改正により、総合点検において**「定格出力の30%以上の負荷運転」、または「内部観察点検」**の実施が求められています。

なぜ負荷運転が必要か？： 無負荷（空ふかし）での運転ばかり繰り返すと、エンジン内に未燃焼の燃料（カーボン）が溜まり、出力低下や故障の原因となるためです。

部品名	交換の目安（周期）	理由
蓄電池（バッテリー）	2〜5年	経年劣化により始動時に必要な電流を出せなくなるため。
エンジンオイル	1〜2年	酸化による潤滑性能の低下を防ぐため。
冷却水（クーラント）	2〜4年	防錆効果の低下による内部腐食を防ぐため。
各種フィルタ類	2〜4年	目詰まりによるエンジン不調を防ぐため。
ゴムホース類	5〜10年	硬化・亀裂による漏れ事故を未然に防ぐため。