油圧ポンプの修理とメンテナンスのポイント

圧ポンプに不具合が生じると、生産ライン全体がストップし、多大な損失を招きかねません。

「ポンプの圧力が上がらなくなった」「異音がする」「オイル漏れを見つけたが、どこまで自社で対応すべきか」

こうした悩みを抱える保全・メンテナンス担当者の方に向けて、本記事では油圧ポンプの修理・メンテナンスのポイント、故障原因の切り分け方、そしてプロにオーバーホールを依頼すべきタイミングを徹底的に解説します。

油圧機器・油圧ユニットの重要性とメンテナンスの意義

工場の自動化設備やプレス機、工作機械など、大きな力を必要とする場面で必ずと言っていいほど使用されているのが油圧機器です。油圧システムは、電気エネルギーを油圧ポンプで流体エネルギーに変換し、それをシリンダやモータで機械的エネルギーに戻す仕組みです。

メンテナンスを怠るリスク

油圧機器は非常に精密なクリアランス（隙間）で構成されています。そのため、わずかな「作動油の汚れ」や「部品の摩耗」が致命的な故障に直結します。

• 突発停止による生産ロス： 修理のためにラインを止め、納期遅延が発生。
• 事故のリスク： 高圧油の噴出による火災や、機械の誤作動による人身事故。
• 修理コストの増大： 早期ならシール交換で済むものが、放置によりポンプ本体の交換が必要になる。

日常点検と適切なメンテナンスこそが、工場のLCC（ライフサイクルコスト）を抑える鍵となります。

油圧ポンプのトラブル：よくある症状と原因

現場で発生するトラブルには必ず予兆や原因があります。特に検索頻度の高いトラブルについて、そのメカニズムを解説します。

① 油圧ポンプの圧力が上がらない・圧力低下の原因

「設定圧まで上がらない」「シリンダの動きが遅い」といった症状は、油圧回路のどこかで**「内部リーク（漏れ）」や「エネルギー損失」**が発生している証拠です。

• ポンプの摩耗： 長年の使用により、ポンプ内部のギヤやピストンとケースの隙間が広がり、高圧を保持できなくなっている。
• リリーフバルブ（逃がし弁）の不具合： 圧力を制御するバルブにゴミが噛み込んだり、スプリングが疲労したりして、設定圧に達する前に油がタンクへ逃げている。
• 作動油の粘度低下： 油温が上がりすぎると油がサラサラになり、隙間から漏れやすくなるため、実質的な圧力が低下します。

② 油圧ポンプのオイル漏れ

オイル漏れは視覚的に最も分かりやすい異常です。

• シール・パッキンの劣化： ゴム製のシールは熱や経年変化で硬化し、密封力を失います。
• 軸シールの破損： ポンプの回転軸部分からの漏れは、内部ベアリングの異常や、外部からの異物混入が原因であることが多いです。

③ 異音と振動（キャビテーション・エアレーション）

「キーン」という高い金属音や、バリバリという振動が発生している場合、非常に危険な状態です。

• キャビテーション： 吸い込みフィルタの目詰まりなどでポンプ内に気泡が発生し、それが高圧部で弾ける現象。ポンプ内部を物理的に破壊します。
• エアレーション： 配管の継ぎ目やオイルシールから空気を吸い込んでいる状態です。

保全担当者が実践すべき「正しい点検・メンテナンス」

故障を未然に防ぐために、現場で行うべき具体的なポイントを整理しました。

油圧ポンプの点検項目リスト

油圧ポンプの「エア抜き」手順

修理後やオイル交換後に必須となるのがエア抜きです。空気が残ったまま高圧運転を行うと、断熱圧縮により油が炭化し、機器を損傷させます。

1. 無負荷運転： リリーフバルブを全開（低圧）にし、ポンプを数回「寸動（一瞬だけ回す）」させます。
2. エア抜きプラグの利用： ポンプ上部にあるエア抜きプラグを少し緩め、気泡が混じらなくなるまで油を排出させます。
3. シリンダの往復： 各アクチュエータを低圧でフルストローク往復させ、回路全体の空気をタンクへ戻します。

作動油の管理（NAS等級の意識）

油圧機器の故障の約70%〜80%は、作動油の汚染（コンタミネーション）が原因と言われています。目に見えない微細な金属粉やゴミを管理するために、定期的なオイルパニック試験や、フィルタの適切な選定が重要です。

修理か？オーバーホールか？判断の基準

「不具合が出てから直す（事後保全）」から「壊れる前に直す（予防保全）」へのシフトが、生産現場のスタンダードです。

油圧機器のオーバーホール（分解整備）の目安

一般的に、油圧ポンプのオーバーホール推奨時期は稼働20,000時間、または3〜5年と言われています。

• メリット： 分解・洗浄を行うことで、外見ではわからない内部パーツの摩耗度を確認し、致命的な故障が起こる前に消耗品を全交換できます。
• タイミング： 「最近、設定圧を維持するためにバルブを締め込んでいる」「作動油がすぐ熱くなる」といった傾向が見られたら、オーバーホールの検討時期です。

自社修理の限界

簡単なホース交換やOリングの交換は現場で対応可能ですが、ポンプ内部の摺動面（しゅうどうめん）の研磨や、精密な圧力調整が必要な修理は、専門業者への依頼を強く推奨します。不適切な組み立ては、再稼働直後の焼き付き事故を引き起こすリスクがあるためです。

油圧機器の健康管理はプロにお任せください

油圧ポンプの「圧力が上がらない」「オイル漏れ」「異音」といったサインは、機械からのSOSです。これらを見逃さず、適切なタイミングでメンテナンスやオーバーホールを行うことが、最終的に最もコストを抑え、工場の安全を守ることに繋がります。

• 最近、設備の動作が重くなった気がする
• 油圧ユニットの周りがいつも油で汚れている
• 長年オーバーホールをしておらず、不安がある

一つでも心当たりがある保全担当者様は、ぜひ一度、当社までお問い合わせください。専門スタッフが貴社の現場へ伺い、最適なメンテナンスプランをご提案いたします。